「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群が世界遺産に登録されるに至った理由と経緯

2017年7月、「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群が世界文化遺産に登録されました。また一つ、日本に世界遺産が増えることになりましたね。ですが、このニュースが報道される以前から、宗像や沖ノ島についてご存じだった方はそう多くないと思います。

そこで今回は、「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群とは何か、そして世界遺産に登録されるに至った理由や経緯について簡単にご紹介していきます。

（トップ画像引用：NHKエンタープライズ様番組ページhttps://www.nhk-ep.co.jp/release-4kokinoshima-160225/）

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群とは

世界遺産に登録された構成資産は大きく分けて(※1)全部で5つ、①宗像大社沖津宮(おきつみや)②宗像大社沖津宮遙拝所③宗像大社中津宮(なかつみや)④宗像大社辺津宮(へつみや)⑤新原･奴山(しんばる･ぬやま)古墳群です。いわゆる沖ノ島というのは、①の宗像大社沖津宮のことです。

※1　本来は沖ノ島の三つの岩礁(小屋島･御門柱･天狗岩)を含め、8資産です。

今回登録された世界文化遺産は玄界灘に面しており、福岡県宗像市から福津市にかけて散らばって存在しています。「宗像大社」という神社の名前を聞いたことがあるかもしれませんが、これは沖津宮･中津宮･辺津宮という三つのお宮の総称を意味しています。

これらのうち、最も有名なのが「神宿る島」と呼ばれる沖ノ島ではないでしょうか。沖ノ島には4世紀から9世紀にかけての古代祭祀の変遷※2がわかる遺跡が、ほぼ手つかずのまま、現代にまで伝わっています。祭祀は中国大陸や朝鮮半島への航海の無事を願うために行われた、国家的なものだったそうです。

※2　祭祀の変遷

また、沖ノ島は「神宿る島」だけでなく、「海の正倉院」という異名も持っています。これは沖ノ島から10万点もの宝物が発掘されたからです。それらは祭祀に用いられたものと考えられていますが、そのうち8万点もの出土品が国宝に指定されています。

ただし、沖ノ島には厳しい入島制限が設けられており、一般の人間は立ち入ることができません。ですが国宝に指定された宝物は、辺津宮境内にある神宝館で見ることができます。

沖ノ島で祭祀を担っていた一族が、古代の有力豪族であった宗像氏です。海を越えた交流も行っていました。そして新原･奴山古墳群は宗像氏によって築かれたもので、海を臨む場所に作られました。海とはまさしく、彼らが活躍した舞台であったからです。

世界遺産に登録されるためには、いくつもの条件を満たすことが必要です。そもそも世界遺産条約を締結していること、そして登録する計画のある物件のリストをユネスコに提出しなければ審査の対象にすらなりません。

さらに10個ある世界遺産の登録基準に一つ以上合致し、真実性や完全性の条件を満たし、さらには国内法によって保護管理体制がとられていることも条件となります。

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群は、10個の登録基準のうち、

という3つの基準に該当する判断し、世界遺産登録を目指していました。登録が実現した際にも、その普遍的価値の高さや希少性などが評価されました。

実は当初から申請していた8資産のうち、沖ノ島と3つの岩礁だけが認められ、他の4つの資産についてはユネスコの諮問機関であるイコモスから除外するように勧告を受けていたそうです。

ところが世界遺産委員会の判断は一転して、すべての資産の登録を認めました。文化庁や外務省、さらには地元の方々も8資産の一括登録について熱心に説得した結果だそうです。今回はその願いが叶う結果となりましたが、やはり世界遺産に登録されることは非常に難しいことだということがよくわかります。

今回は「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の概要と世界遺産に登録された理由と経緯について、簡単にご紹介しました。世界遺産にはどれほど価値あるのかしっかり理解した上で、現地に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

【参考】

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