最近、お水取りをする方が多いようですね。宗像大社ですと、天真名井(あめのまない)の湧水が有名です。
目次
天真名井(あめのまない)とは
宗像大社は沖津宮(おきつぐう)・中津宮(なかつぐう)・辺津宮(へつぐう)という三つのお宮から成り立っています。それぞれのお宮は離れた場所にあり、沖津宮は玄界灘に浮かぶ沖ノ島、中津宮は本土から少し離れた大島、辺津宮は九州本土の宗像市内に鎮座しています。
中津宮の境内にある
今回取り上げるのは、大島にある中津宮です。宗像市内にある神湊(こうのみなと)から船に乗り、15~25分程度で大島港ターミナルに着きます。さらにターミナルから徒歩5分、中津宮に到着です。
中津宮の社務所の横を通り、天の川(この川については、後ほどご紹介しますね!)へと降りていく道を進みます。すると川の傍らに見えてくるのが小さな祠(ほこら)です。こちらが天真名井と呼ばれている場所です。
延命招福の名水
そちらから湧き出る水は“延命招福”の名水として知られています。他にも、こちらのお水を飲むと書道が上達するとも言われているようです。天真名井には柄杓(ひしゃく)が備えてありますので、そちらを使って飲むことができます。
また、こちらのお水と地元宗像のお米を使って作られた日本酒もあります。オンラインで注文することもできますので、日本酒が好きな方はぜひ一度ご賞味ください。
誓約(うけい)について
さてさて、“天真名井”と聞いてピンと来た方もいるかもしれません。天真名井は日本神話にも登場しますよね。皇室の祖・天照大神(あまてらすおおみかみ)と、その弟・スサノオノミコトとの誓約(うけい)は、天真名井で行われたと伝えられています。
天照大神とスサノオノミコトの誓約
天照大神は、スサノオノミコトが謀反(むほん)を起こすのではないかと疑っていました。そこで誓約という占いを行うことになりました。お互いに子をなし、生まれた子が女であればスサノオにやましい心はない、とする取り決めでした。
天照大神はスサノオが持っていた十握(とつか)の剣を三つに折って、天真名井の水を降り注ぎ、噛み砕いて吹き出しました。
すると霧の中から、田心姫神(たごりひめのかみ)・湍津姫神(たぎつひめのかみ)・ 市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)という三女神が生まれました。
また、スサノオも天照大神の持っていた「八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠」を噛み砕き、そこから生まれたのは五柱の男神でした。
- 正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみ)
- 天之菩卑能命(あめのほひのみこと)
- 天津日子根命(あまつひこねのみこと)
- 活津日子根命(いくつひこねのみこと)
- 熊野久須毘命(くまのくすびのみこと)
スサノオが持っていた剣から女神たちが生まれたので、この対決はスサノオの勝ち。見事に疑いを晴らしたのでした。しかしこの後、スサノオはいたずらを繰り返し、天照大神は天岩戸に籠ることになってしまうのでした……。
実は全国にある天真名井
この神話の舞台となった天真名井ですが、実は全国に同じ名を持つ場所はいくつもあるのです。「なんだ」と思われたかもしれませんが、天照大神とスサノオノミコトの誓約で生まれた女神たちは宗像三女神と呼ばれ、宗像大社の御祭神としてお祀りされています。
そこで宗像大社にある天真名井は、まさに本場といえるのではないでしょうか!?
天の川について
では、先ほど少しご紹介した天の川についてです。天の川は中津宮の境内に流れる、天真名井から湧き出る水も流れ込む川です。そんな天の川を挟んだ両岸には、牽牛社(けんぎゅうしゃ)と織女社(しょくじょしゃ)があります。
大島の七夕伝説
もう、おわかりですよね。中津宮は、実は日本における七夕伝説の発祥の地とされているのです。そして、ここでも関係してくるのは“水”なのです。
昔、朝廷の命によって、とある貴族の若者が唐(現在の中国)から織女たちを連れてくることになりました。そしてその若者は帰国の途中、織女の一人と恋に落ちます。ですが役目を終えた若者は都へ帰り、織女は宗像大社の辺津宮に預けられ、二人は離れ離れになってしまいました。
都でわびしい暮らしをしていた若者ですが、ある晩、枕元に天女が現れます。その天女は、「宗像の中津宮へ行きなさい」と告げたそうです。大島の中津宮に来た若者は、天の川で禊(みそぎ)を行いました。
すると手桶の中には、恋をした織女が映っていたというのです。それ以来、若者は神に仕えるようになり、毎年七夕になると水鏡に映る織女との逢瀬を楽しんだといいます。
毎年8月7日七夕祭
とてもロマンチックなお話ですよね。書いていて、恥ずかしくなりました。その伝説にちなみ、毎年旧暦の七夕にあたる8月7日には、大島で盛大に七夕祭が執り行われています。
かつてはその祭りの前に牽牛社・織女社に参籠(さんろう)し、川の水を張ったタライに映る姿によって、男女の縁を定めるという風習もあったようです。
水みくじ
このように、何かと水に縁のある宗像大社の中津宮です。水に浮かべると文字が浮かんでくる“水みくじ”もありますので、訪れた際にはぜひ引いてみてくださいね。
最後に
今回は、宗像大社中津宮のお水にまつわる話をご紹介しました。せっかく船で大島まで行くのでしたら、ぜひ一度、天真名井の湧水を飲んでみてくださいね!
【参考】
産経ニュース「天真名井(福岡県宗像市)」
http://www.sankei.com/region/news/161108/rgn1611080035-n1.html
個人ブログ「筑前大島 天の真名井」
https://ameblo.jp/everbridge/entry-11143612617.html
宗像大社「宗像大社中津宮 ―島の暮らしとともにある信仰の場―」
http://www.okinoshima-heritage.jp/visit/nakatsumiya
トリップアドバイザー「宗像大社 中津宮」
勝屋酒造合名会社 「VOL5 水のおはなし」
http://www.katsuyashuzo.com/web/sake/tayori05.html
http://www.katsuyashuzo.com/web/shop/shop02.html#010
宗像大社「祭事表」
http://www.munakata-taisha.or.jp/html/summer.html
西日本新聞社「宗像大社 中津宮の恋みくじ」
http://c.nishinippon.co.jp/photolibrary/cat672/post_1872.php
個人ブログ「祝!世界遺産登録『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産]限定酒と中津宮と宗像大社さんへお参りに~」←水みくじの参考