伊勢神宮のトップは「宮司?」誰がなれるの?役目・役職は?謎に迫る!

写真はイメージです
神主さんの仕事内容やお給料なども気になるところではありますが、どういった組織なのかということも非常に大切ですよね。

実は、伊勢神宮の神職制度は、他の神社とは異なっているのです。

 

そこで今回は、伊勢神宮の神職制度とその歴史について、ご紹介します。

 

目次

伊勢の地への鎮座

 

伊勢神宮の御祭神は、天皇家の祖先神でもある天照大御神(あまてらすおおみかみ)です。

まず、伊勢神宮の神職制度を語る上で欠かせないのが、天照大御神はどのようにして伊勢の地に辿り着いたのか、ということです。

 

八咫鏡の祟り?

 

八咫鏡(やたのかがみ)をご存じでしょうか。八咫鏡は、三種の神器のひとつで、現在でも皇室に伝わり、これらを継承することによって天皇であることを保障されるという、とてもとても大切な神宝です。

 

そもそも八咫鏡とは、「天の岩戸」の神話に出てきたものです。また、その鏡は、「天孫降臨」の神話にも登場し、天照大御神がニニギノミコトに対して「これを私と思って祀るように」と伝えたとされています。そのため、八咫鏡=天照大御神であるともいえます。

 

このような逸話を持つ八咫鏡ですが、歴代の天皇により、宮中にお祀りされていました。しかし第10代崇神天皇の時代に、転機が訪れます。国内に疫病が流行り、多くの国民が亡くなってしまいました。

 

それは八咫鏡の祟りであると畏れた崇神天皇は、八咫鏡を宮中から遷すことにしました。そこで天皇の皇女・豊鍬入姫命(とよすきいりびめのみこと)によって、倭笠縫邑(やまとのかさぬいのむら)という場所に遷されたといわれています。その地が現在のどこであるのかは、諸説あるそうです。

 

天照大御神にふさわしい地を求めて

 

このように八咫鏡を宮中から遷すことによって、国難を乗り切ることができたといわれています。第11代垂仁天皇の世になり、天照大御神をより良い地にお祀りするため、皇女・倭姫命に鏡が託されました。

 

大和の国を出た倭姫命は、各地を巡り歩きます。そして伊賀や近江、美濃などを経て、伊勢・五十鈴川の畔へ辿り着きました。伊勢の地は風光明媚で、海の幸にも恵まれた場所です。気に入った天照大御神は、倭姫命に「この国にいたい」と告げたといい、これが伊勢神宮のはじまりと伝えられています。

 

斎王制度とは

 

このように、伊勢の地に鎮座することになった天照大御神に対して、天皇の代理としてお仕えする者が必要となりました。その存在を、「斎王」といいます。

 

天照大御神を伊勢へと導いたのは、豊鍬入姫命と倭姫命であったということから、以来、お仕えするのは皇女にすべしということになりました。そこで、斎王は代々、天皇家の未婚の女性の中から選ばれるようになったといいます。

 

斎王という存在は制度化され、新しい天皇が即位すると同時に、占いによって決められました。選ばれた女性は、直ちに斎宮野宮(さいぐうのみや)という、斎王になるために身の穢れを落とすための宮に一年間入り、それから伊勢へと向かったといいます。

 

この斎王制度は、南北朝の時代まで続けられましたが、廃絶します。しかし、この制度の存在が実は、現在の伊勢神宮の神職制度に影響を与えています

 

「祭主」の存在と伊勢神宮特有の神職制度

 

前置きが長くなりました。ここでやっと、伊勢神宮特有の神職制度についてご説明します。

 

ちなみに、冒頭で「神主」さんと申し上げましたが、神道の世界に「神主」という職業名は存在しません。「神職」というのが正しいそうです。「僧侶」のことを、お坊さんと呼んでいるのと同じですね。

 

祭主と宮司

 

まずは、一般的な神社の神職制度は、
組織のトップから

「宮司」
「権宮司(ごんぐうじ)」
「禰宜(ねぎ)」
「権禰宜」
「出仕(しゅっし)」

という役職に分けられます。

宮司が最上位に位置し、それを補佐する権(=副の意味を持つ)宮司がおり、出仕は神職の見習いです。

小さい神社では宮司一人というところもあります。
権宮司は大きい神社にしかいらっしゃいません。

また、神社によっては宮司の上に、「名誉宮司」という存在があるかもしれません。

 

では、伊勢神宮の神職制度はどうなっているかといいますと、
上から

祭主
大宮司
少宮司
禰宜
権禰宜
宮掌(くじょう)
出仕

に分けることができます。一般的な神社との違いは、「祭主」「大宮司」「少宮司」、そして「宮掌」ですね。

 

まず「少宮司」ですが、こちらは大宮司の補佐であり、一般の神職のトップです

また、宮掌についてですが、こちらも神職の見習いです。出仕と違って定員があります。

 

注目すべきは、「祭主」と「大宮司」という存在です。では、それぞれ、どういった役職なのでしょうか。

 

祭主と大宮司について

 

まずは、伊勢神宮のトップに立つ「祭主」についてです。

こちらは伊勢神宮にしかない職種で、規則上、皇族または皇族であった者が就けるとされています。

それがなぜかというと、先ほどご紹介した「斎王」と関係があります。

祭主は、かつて制度化されていた「斎王」の役割を兼ねているため、元皇族の女性が任命されているのです。 
これに対し、祭主を支えるのが大宮司です。こちらも伊勢神宮にしかない職種です。
先ほど、少宮司について、”一般の”神職のトップとご紹介しました。
すなわち、大宮司に就任できる人物は特別な人間であるいうことです。大宮司には、旧皇族か華族の出身者が就任することになっています。

 

ということで、現在の祭主は昭和天皇の四女・池田厚子さん、大宮司には旧華族・鷹司家の鷹司尚武さんが就任されています。

 

まとめ

 

天皇家と深いかかわりを持つ伊勢神宮だけあって、その組織の形成にも長い歴史があったことがわかりますね。そういえば、日本史の教科書にも、外宮の神職・度会(わたらい)氏が載っていました。度会氏は「伊勢神道」を唱えたことで有名ですよね。

 

伊勢神宮には、神様に奉仕する神職だけで100人前後いるそうです。他にも楽師や巫女、事務・警護を担当する職種などもあります。全体としては600人前後の大所帯で、日本では最大の神社組織です。伊勢神宮で働けるなんて、羨ましいですよね。

 

 

 

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