『神宿る島』宗像・沖ノ島。初観光の際におさえておきたい文化遺産のポイント

2017年7月、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界文化遺産に登録されました。これを機に、初めて宗像に行くという方も多いはず。そこで今回は初心者の方でも、世界遺産について、せめてこれだけは押さえてから行って欲しいポイントについてご紹介します。

目次

世界文化遺産に登録された資産は8つ

もしかしたら、宗像大社が世界遺産に登録されたと思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には全部で8つの資産が登録されています。

  1. 宗像大社沖津宮(沖ノ島)
  2. 小屋島
  3. 御門柱
  4. 天狗岩
  5. 宗像大社中津宮
  6. 宗像大社沖津宮遥拝所
  7. 宗像大社辺津宮
  8. 新原・奴山古墳群

よく「宗像大社」といいますが、「宗像大社」という一つの特定の場所はありません。

玄界灘に浮かぶ沖ノ島に鎮座する沖津宮(おきつみや)、同じく大島に鎮座する中津宮(なかつみや)、そして宗像本土にある辺津宮(へつみや)の三つを総称して「宗像大社」と呼んでいるのです。

それではここからは、各資産の特徴や見どころについて、ご説明していきますね。

宗像大社沖津宮・小屋島・御門柱・天狗岩について

では、まずご紹介するのは沖ノ島周辺にある遺産です。沖ノ島とは玄界灘に浮かぶ絶海の孤島。宗像本土から60kmほどの沖合にあります。古代、日本から朝鮮半島へ舟で行くときのルート上にあったとされる沖ノ島では、航海安全を祈るための国家祭祀が行われていました。

神宿る島「沖ノ島」とは?

祭祀が行われなくなった後も、沖ノ島は神聖視され、信仰の対象となりました。沖ノ島自体が御神体とされ、現在でも一般人はみだりに立ち入ることができません。また入島した者も、島で見聞きしたことを他に漏らしてはいけないなどの掟が存在しています。まさに「神宿る島」の名にふさわしい島といえます。

そんな島に鎮座しているのが沖津宮。御祭神は田心姫神(たごりひめのかみ)といい、宗像三女神といわれる神様の一柱です。三女神は姉妹で、田心姫神は長女とされています。

鳥居の意味を持つ3つの岩礁

さて次は、小屋島(こやじま)・御門柱(みかどばしら)・天狗岩についてです。これら3つの資産は、沖ノ島から南東へ約1kmのところにある岩礁のことです。岩が世界遺産に? と思われた方もいるかもしれませんが、こちらの3つの岩は沖ノ島に渡るときの鳥居として、大切な役割を果たしています。

宗像大社中津宮・宗像大社沖津宮遥拝所について

次にご紹介するのは大島という、宗像本土から11kmほど沖合にある島にある2つの資産についてです。これ以降ご紹介する資産は、実際に行くことができますよ!

すぐ近くには古代祭祀跡も「宗像大社中津宮」

大島へは、宗像本土の神湊港からフェリーもしくは旅客船で向かいます。大島港ターミナルから徒歩約5分、中津宮が鎮座しています。御祭神は湍津姫神(たぎつひめのかみ)といい、宗像三女神の次女にあたります。

さて、急な階段を上るとまず見えてくるのが中津宮の本殿。こちらは福岡県の有形文化財にも指定されています。さらに社殿の裏の山道を進むと、御嶽山(みたけさん)の山頂(224m)には御嶽神社という神社が鎮座しています。

その神社ができる前は、かつてその場所でも沖ノ島と同様の祭祀が行われていたと考えられています。

沖ノ島も臨める「宗像大社沖津宮遥拝所」

一般人の入島を厳しく制限している沖ノ島ですが、特に女性はいかなる場合であっても立ち入ることができませんでした。そこで大島の北側に造られた沖津宮遥拝所は、沖ノ島を訪れることのできない人のための祈りの場所です。18世紀頃までには、現在の場所に設けられていたことがわかっています。

天気のいい日は、遥拝所からも沖ノ島が拝めるそうです。大島を訪れた際には、必ず立ち寄りたいスポットです。大島ターミナルから遙拝所へは観光バス(グランシマール)で約7分、徒歩だと約20分で到着しますよ。

宗像大社辺津宮

辺津宮は宗像本土に鎮座しているお宮です。アクセスの良さからか、単に「宗像大社」という場合には、こちらの辺津宮のことを指すのが一般的です。御祭神は宗像三女神の三女・市杵島姫命(いちきしまひめのかみ)です。

信仰の中心地「辺津宮」

参道を進み、神門の向こうに見えるのが辺津宮の本殿です。現在の地に社殿が建てられたのは遅くとも12世紀頃と考えられているようです。

現在残っている本殿は宗像大社の大宮司・宗像氏貞によって造られました。また拝殿は戦国時代に活躍した小早川隆景によって再建されたものといわれています。本殿と拝殿は、いずれも国の重要文化財に指定されています。

中津宮境内には他にも、「第二宮(ていにぐう)」「第三宮(ていさんぐう)」という、それぞれ田心姫神・湍津姫神をお祀りしているお宮や、古代祭祀の形を色濃く残した「高宮斎場」などがあり、現在でも信仰の中心となっています。

沖ノ島から出土した国宝を展示「神宝館」

さて、辺津宮に行ったら必ず訪れていただきたいのが神宝館です。沖ノ島では、かつて国家祭祀が行われていたとご紹介しましたが、それを裏付けるモノが発掘されているのです。それは祭祀に使われていたであろう、大量の宝物たちです。そのうち、なんと8万点もが国宝に指定されているんですよ!

それらを収蔵・展示しているのが、辺津宮境内にある神宝館なのです。非常に見ごたえのある展示内容となっていますので、参拝後にぜひ足を運んでみてください。ただし、最終入館は16時までとなっていますのでご注意くださいね。

新原・奴山古墳群について

さて、ここまではいずれも宗像大社関係の資産をご紹介しました。ですが、新原・奴山(しんばる・ぬやま)古墳は少し違います。こちらは宗像市の隣、福津市にある60基の古墳群のです。南北8km、東西2kmのエリアに古墳が点在しています。

これらの古墳群を築いたのは、古代豪族の宗像氏です。5世紀から6世紀にかけて造られたと考えられています。さて、ではなぜ、宗像氏の古墳が世界遺産に登録されることになったのでしょうか。その答えは、宗像氏が優れた海洋技術を持っていたことにあります。

ヤマト政権が朝鮮半島や大陸と交流するには、宗像氏の協力が欠かせなかったのです。やがて宗像氏は、沖ノ島で行われた祭祀も司るようになったといいます。ですので新原・奴山古墳群とは、宗像の信仰を支えた一族の存在を証明する資産でといえます。

最後に

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群を観光して巡る際、知っておきたいポイントについてご紹介しました。少しでも興味の湧いた資産があれば、ご自身でも詳しく調べてみてください。深く理解してから現地へ行けば、より楽しい思い出になること間違いなしです!